こんにちは、現役で作業療法士をしているあきら(@imoto_akira) です。
僕はこの約3年間、精神科の病院で作業療法士として働いてきました。
そのなかで「精神科作業療法士って辛いな・・」と感じることが多かったため、今回は「精神科作業療法士の何が辛いのか」を書いていこうと思います。
精神分野に進むか悩んでいる方にとって、かなり有益な情報だと思うので、ぜひ最後までよんでみてください(^^)
精神科作業療法士はここが辛い!
雑用が多い
精神科の作業療法士は身体分野の作業療法士に比べると、かなり雑用が多いです。
さまざまな物品を用いてリハビリテーションを行うため、その道具や材料の手入れや準備をする時間が必要となるわけですね。
ほとんどの病院で「脳トレ活動」があると思います。
これはプリントを患者さんたちに配り、その問題を解いてもらうことで脳と手指に刺激を与える、という活動なのですが、精神科は「集団でのリハ」が主であるため、一度の活動で数百枚のプリントが必要になります。
そのプリントの作成・コピーだけで午前中の仕事が終わってしまう、なんてことも。
他にも屋外での畑作業やスポーツをすることもありますが、そのたびに飲み物を準備する、コップを洗う、などの手のかかる雑用が発生します。
患者さんの対応が大変
精神科の病院に入院している方たちは、誤解を恐れずに言うと、独特の考え方や癖をもっている方も多いです。
「普通、そんなことしないでしょ!?」と思わずツッコミたくなるような言動をするときだってあります。
病院から抜け出そうとしたり、急に大声をあげる方もいますからね。
また、患者さんの理解できない行動にストレスを感じることもあるでしょう。
それでも「これも仕事だから」としっかり割り切って患者さんと向き合わなければなりません。
物品の管理がかなりシビア
活動の中でお裁縫の針や、ハサミなどを使うことがあるのですが、これらの「危険物」とされる物品は特に注意して管理する必要があります。
というのも、精神科に入院している患者さんの中には自傷行為をしてしまう方もいるからです。
過去、女性の患者さんに「このパーカー似合うでしょ?」とヒモ付きのパーカーを自慢されました。
僕は「はい、似合ってますね^_^b」と答えたのですが、この場面を見ていた先輩に「ヒモをこっちに手渡すように言わないとダメだよ」と指導をいただいたことがあります。
その女性は希死念慮(死にたいと思うこと)のある方だったのです。
そのヒモを使って首吊り自殺や自傷行為をしないように、とのことでした。
また、消しゴムが一つなくなっただけでも、精神科では大騒ぎです。
認知症の方が食べものと間違えて口にしてしまうので。
じっさい、活動中に消しゴムがなくなったときは、精神科の作業療法士が総出で1つの消しゴムを何時間にもわたって捜索する、ということがありました。
消しゴム1つが患者さんの命にかかわるため、物品の管理は本当に気が抜けません。
「仕事の成果」を実感しづらい
精神科の作業療法は「患者さんの心を治す仕事」ともいえるでしょう。
でも、人の心というのは、どれくらい治ったか、改善したか、というのがなかなか目に見えません。
身体障害の分野であれば「握力が〇〇キロまで向上した!」など目に見えて結果が出るのですが。
結果が見えないからこそ「自分がやっていることは果たして本当に意味があるのだろうか」と不安になりやすいです。
別の病院の精神科作業療法士とごはんに行ったとき、「自分の仕事にどれだけの意味があるのかな、とギモンに感じるときが多いです」と話したのですが、その場にいた他の作業療法士たちも「それめっちゃわかる」とみんな同じ悩みを抱えていました。
患者さんから感謝されることは少ない
身体障害の分野に比べ、精神分野の作業療法士は患者さんから熱烈な感謝を受ける、ということがほぼありません^^;
精神科の患者さんは病識(自分が病気であることを自覚すること)がない方が多いからです。
そのため、周りの精神科作業療法士をしている友達も「あまりやりがいを感じられない」とよく言っています。
対して、身体障害分野にすすんだ方の話を聞くと「患者さんからめちゃくちゃ感謝されるから、それがモチベーションになる」「退院する日に患者さんから感謝してもしきれない、とチップをもらえることがある」なんて言ってたので、少しうらやましく思っちゃいました。
まあ、本当は 受け取ってはいけませんが。
テンションを上げないといけないときがある
精神科として働くからには絶対といっていいほど「レクリエーション」をしなければなりません。
レクリエーションとは、「ほかの患者さんを交えてカラダやアタマを鍛えるゲーム」のこと。
精神科の作業療法士はレクリエーションを用いてリハを行うといっても過言ではないでしょう。
このとき、作業療法士は司会進行をすることになるのですが、テンションをあげ、場を盛り上げる必要があるのです。
そして、司会者が楽しそうにしていなければ、患者さんも楽しめないですよね。
表情明るく、声は大きく、タイミングよく気の利いたことを言わないと場は盛り上がりません。
僕はもともとテンションが高くないので、新人の時はかなり指導を受けました。いやー、あれは辛かったですね・・。
一年もやれば慣れてきて、元気にふるまえるようになりましたが、人前ではしゃぐことが苦手な人にとっては大きな壁となるかもしれません。
他のスタッフとの連携が大変
身体分野の作業療法士は、キホンひとりで患者さんにリハを行います。
しかし、精神科では作業療法士ふたり、もしくは3人でひとつのチームとなり、病棟を担当するというパターンが多いです。
つまり
・身体障害分野
患者さんと1対1でリハをするため、ひとりで働く時間が主になる。
・精神障害分野
作業療法士2人、もしくはそれ以上で大人数の患者さんのリハを行うことが多い。一人の作業療法士で25人の単位をとれるので、作業療法士が2人なら、マックス50人の患者さんに同時にリハを行う。
こんな感じになるわけです。
もちろん、身体障害の分野でも、ほかの専門職の方がたと連携をとらなくてはいけません。
しかし、精神障害分野では一日中、相方と仕事をしなければいけない、なんてこともざらです。
ちなみに僕は一年目のときに相方の先輩と気が合わず、かなり消耗してました。
人間関係に極力しばられずに働きたい、と思うのであれば身体分野にいくことをおススメします。
まとめ
今回ぼくが挙げた「作業療法士が精神分野で働くのが辛い理由」をいくつか身体分野の作業療法士と比べてみましょう。
精神分野 | 身体障害分野 | |
患者さんからの感謝度 | 低い | 高い |
職場の人間関係 | 縛られる | ほぼ縛られない |
スキルUPに繋がらない雑務 | 多い | 少ない |
仕事の成果 | 感じにくい | 感じやすい |
患者さんの状態 | 改善しにくい | 改善しやすい (自然治癒力があるため) |
うーん、これ身体分野にすすんだ方が完全にメリットがあるのでは?と改めて思っちゃいました^^;
結論:精神科作業療法士はあまりおススメしない
僕はよっぽどの理由がない限り、精神科作業療法士になることはおすすめしません。
「自分はどうしても精神科の領域にすすみたい!」「精神科の領域で成し遂げたいことがある!」と思っている方以外は、だいぶキツイと思います(もちろん身体分野も大変だとは思いますが)。
やっぱり、周りの作業療法士を見渡してみると身体分野にすすんだ人はやりがいを持って働いているけど、精神分野に行った人はいろいろと思い悩んでいる方が多い印象を受けます。
すすむ分野が違うだけで、全くべつの仕事になるのが作業療法士です。
大事な選択になると思うので、後悔のない選択を!